最近読んだ漫画

『透明なゆりかご』を読んだ。1990年代に産婦人科で看護師見習いをしていた著者による、いわゆるコミックエッセイだ。

妊娠中、『コウノドリ』と共に気にはなっていたものの、産婦人科の現場で起きるあれやこれやについて先取りする勇気がなく、読めないでいた。

最近になって携帯にバナー広告が表示されるようになり、改めて読んでみた。いつもの散歩中に、本屋で買った。

ところどころで、ボロボロ泣いた。特に1巻の健太くんの話。

健太くんは、不倫の果てに野良妊婦となった田中さんから産まれた赤ちゃんだ。

田中さんは最初、せっかく産まれてきた健太くんにまるっきり無関心で、不倫相手の気持ちを自分に向かせることばかりに腐心する。しかし徐々に健太くんには自分しかいないことに気づき、心を入れ替えて著者と共に健太くんの世話に励むようになる。そして、生まれ変わったようなスッキリした表情で退院していく。

後日、著者は退院後間もなく健太くんが亡くなったことを知る。原因は添い寝中の窒息死ということだが、周りの看護婦たちはさもありなんという感じで虐待を疑っている。

しかし著者だけは違う想像をする。

お母さんと一つの布団で、夜中に泣き出す健太くん。眠い目をこすって、しかし穏やかな表情で授乳するお母さん。嬉しそうにおっぱいをコクコク飲む健太くん。そしてひっそりと訪れる悲しい静寂。

台詞のない淡々としたページだが、それが一層お母さんと健太くん二人きりの、愛に満ちた時間を際立たせる。布団の温もりまでがこちらに伝わってくるような2ページで、何度読み返しても泣いてしまう。

「私は健太くんは愛情につつまれて死んでいったんだと思いたかったー」著者の結び通りのことを、漫画を閉じた後もしばらく願ってしまうほど、心を掴まれた話だった。